交通 →Traffic → 今週号:This issue: 2026年8月3日(月)

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空がかすむ日、ラスベガスで何を見て何をするか——AQIの線引きと、日本の数字との違いHazy days in Las Vegas: what to check and what to do — AQI thresholds, and how they compare with Japan's PM2.5 standard

AQIの6段階と、公式が言っている行動。日本の基準値がどこに重なるかも(本文より作図)
AQIの6段階と、公式が言っている行動。日本の基準値がどこに重なるかも(本文より作図)

ラスベガスで空が白くなる日は、山火事の煙より砂ぼこりのほうが多い。郡が注意報を出す線も、学校が屋外活動をやめる判断も、公表された数字で決まっています。日本の「PM2.5 35マイクログラム」がアメリカのAQIでどこにあたるかまで含めて、一枚にまとめました。数字は日々動くので、この記事には今日の値を書きません。

ラスベガスで空が白くかすむ日があります。夏の午後、山の向こうが灰色にぼやける日。多くの人が「山火事の煙だろう」と思いますが、この街で実際に注意報が出るのは、煙よりも砂ぼこりのほうが多い。直近では8月10日から11日にかけて、アリゾナの雷雨が運んできたダストで注意報が出ています。

そして、その日に何をすべきかの大半は公表されています。郡が注意報を出す線も、マスクの種類も、エアコンの設定も。知らないだけで、探せば書いてある。逆に、公式が数字を決めていない部分もあります——学校の屋外活動の基準と、マスクを着け始めるAQIの値です。そこも含めて並べます。

数字は日々動くので、この記事に今日の値は書きません。代わりに「どこを見て、どこで線を引くか」を置いておきます。

どこを見るか

  • AirNow ——連邦の公式サイト。地名やZIPコードで今のAQIが出ます
  • Fire and Smoke Map ——山火事の煙に特化した地図。EPAと米国森林局の共同運営です
  • クラーク郡の大気質マップ ——郡の測定局の値。予報もここ
  • EnviroFlash ——メールまたはSMSで注意報を受け取れます。郡が告知先として公式に挙げています
  • AirNowのスマホアプリ ——同じく郡が公式に挙げている告知先

先にEnviroFlashに登録しておくのが一番効きます。空を見て「今日おかしいな」と思ってから調べるのでは、子どもはもう外で走っています。

郡が線を引くのは AQI 101

クラーク郡の大気質を所管しているのは Department of Environment and Sustainability の大気質局です。ここが注意報(Air Quality Advisory)を出す条件は、公式にこう決まっています。

一酸化炭素・粒子状物質(ダスト)・オゾンのいずれかが、12〜24時間以内に AQI 101 以上に達すると予測される場合

AQI 101 は、後述する6段階のオレンジの入口です。オゾンと煙についての季節注意報は、4月1日から9月30日まで運用されています。

公式: クラーク郡 大気質局

AQIの6段階と、公式が言っている行動

EPAが定める6段階です。色で覚えるのが実用的で、アプリも郡のサイトもこの色を使います。

AQI区分公式が言っていること(PM2.5の場合)
0〜50Goodとくになし
51〜100Moderate人一倍敏感な人は、長時間または激しい屋外での運動を減らすことを検討する
101〜150Unhealthy for Sensitive Groups心疾患・肺疾患のある人、高齢者、子ども、社会経済的に不利な立場の人は、長時間または激しい運動を減らす
151〜200Unhealthy上記の人は長時間・激しい運動を避ける。それ以外の人も減らす
201〜300Very Unhealthy上記の人は屋外での身体活動をすべて避ける。それ以外の人も長時間・激しい運動を避ける
301以上Hazardous全員が屋外での身体活動を避ける。上記の人は屋内にとどまり、活動量を抑える

公式: AirNow — AQI Basics

読むときのコツは、紫までは「外に出るな」ではなく「体を動かすな」と書いてある点です。橙でも赤でも、公式が制限しているのは運動の強度と時間であって、外出そのものではありません。買い物に行くことと、子どもをサッカーの練習に行かせることは、別の判断になります。

線が変わるのは茶(301以上)からです。ここで初めて、心疾患・肺疾患のある人や高齢者・子どもに対して「屋内にとどまり、活動量を抑える」という表現になります。

なお上の表はPM2.5(粒子状物質)の場合の文言です。オゾンや二酸化窒素では、同じAQIでも公式の言い方が違います。ラスベガスの夏はオゾンの注意報も出るので、郡の注意報を見るときは「何の注意報か」も一緒に読んでください。

学校はどうなるか

CCSDには P-6114「極端な気象・環境条件」というポリシーがあります。ただし、この文書にAQIの数値基準は書かれていません。実施の判断は教育長またはその代理人に委ねられています。

では実際どう動くのか。過去の運用を見ると、CCSDは自前の数値を持たず、郡の大気質局が出した注意報を受けて動いています。2024年9月11日には、カリフォルニアの山火事の煙で郡がスモークアラートを出したのを受け、不要不急の屋外活動をすべて中止し、昼食・体育・休み時間を屋内に移しました。

つまり保護者の側から見ると、郡の注意報を自分で受け取っていれば、学校からの連絡より先に見当がつきます。新学期の連絡まわりは 新学年の準備 にまとめてあります。

マスクは何を使うか

公式の答えははっきりしています。N95。布マスクは不可。

EPAもCDCも、粒子を濾過できる呼吸用保護具(respirator)——具体的にはNIOSH認証のN95またはP100——を挙げています。CDC/NIOSHは、使い捨ての不織布マスクや布マスクは曝露低減の効果が最も低いと明記しています。EPAは布マスクを煙対策に使わないよう書いています。

顔との隙間ができないよう、自分の顔に合う形とサイズを選ぶこと。これは環境省の説明も同じ表現です。

ただし、「AQIいくつからマスク」という数値基準は、EPAにもCDCにもありません。どちらも「不健康なカテゴリ(=橙以上)になったら、外出時に着用を検討」という書き方にとどまります。線は自分で引くしかない、というのが公式の現状です。

公式: EPA — 山火事の煙に関するよくある質問CDC/NIOSH — Community Respirators and Masks

家の中をどうするか

こちらも公式に3つ書かれています。

  1. エアコンの外気導入を止める。外気を取り込む機能がある機種は、内気循環(recirculate)に切り替える。外気ダンパーがあれば閉じる
  2. 高性能フィルターを使う。EPAもCDCも MERV 13以上(機器が対応できる範囲で最も高いもの)を挙げています。汚れたら交換
  3. 市販の空気清浄機が手に入らないときは自作でよい。EPAは自作の空気清浄機を「有効な代替手段」と書いています

3つ目は意外に思うかもしれませんが、公式ガイドにそう書いてあります。箱型扇風機にフィルターを取り付けるタイプのもので、CDCは目を離さないことという条件を付けています。

公式: EPA — 山火事の煙に関するよくある質問CDC — 山火事と煙の安全ガイド

夏の家の中の話は 酷暑を生き抜く にもまとめてあります。エアコンの設定を触る話は共通です。

日本の数字と、どう読み替えるか

ここが日本語で暮らしている人にだけ起きる問題です。日本の家族に「今日はAQI 150」と言っても伝わりません。日本はマイクログラム毎立方メートルの実測値で話し、アメリカはAQIという指数で話すからです。

日本側の数字は環境省が公表しています。

  • 環境基準:1年平均値 15μg/m3以下 かつ 1日平均値 35μg/m3以下(平成21年9月設定)
  • 注意喚起の暫定的な指針:日平均値 70μg/m3以上

一方、アメリカのAQIは2024年2月にPM2.5の区切りが改定されました。24時間平均の濃度で並べるとこうなります。

AQIPM2.5(24時間平均・μg/m3)日本の数字との関係
0〜500.0〜9.0日本の年平均基準15より低い
51〜1009.1〜35.4この上限が日本の1日平均基準35とほぼ同じ
101〜15035.5〜55.4日本の環境基準を超えた状態
151〜20055.5〜125.4日本の注意喚起70はこの中
201〜300125.5〜225.4日本に対応する指針値はない
301以上225.5以上日本に対応する指針値はない

覚えておくと便利なのは2つです。アメリカでオレンジになった日は、日本なら「環境基準を超えた日」。 そして日本で注意喚起が出る70は、アメリカでは赤の途中にあたります。

ただし単純な等価ではありません。AQIは24時間平均の区切りから計算する指数で、日本の指針も日平均値です。速報値を見ている瞬間の値どうしを比べても一致しません。あくまで桁の感覚を合わせるための目安として使ってください。

公式: 環境省 — PM2.5に関する情報

なお環境省が高濃度時に勧めている行動——外出と激しい運動を減らす、顔に合ったマスク、屋内は換気を最小限にして空気清浄機——は、EPAとCDCが言っていることとほぼ同じです。国が違っても、やることは変わりません。


編集メモ:この記事に現在のAQI値を書いていないのは、日々変わるためです。値は上に挙げた公式サイトで確認してください。マスクについては、EPAの2つの文書で評価が食い違っています。山火事の煙に関するFAQは、塗装用マスク・防塵マスク・サージカルマスクは煙の吸入を減らさないとしていますが、2026年6月版の公衆衛生担当者向けガイドは、呼吸用保護具が手に入らない場合にはサージカルマスクなどが多少の保護になりうると書いています。本文では、両者に共通する「布マスクは使わない・N95が第一選択」の範囲だけを書きました。CCSDのポリシーP-6114には大気質の数値基準がありません。本文の「郡の注意報を受けて動く」は、2024年9月の実際の運用から書いています。学区が将来この運用を変える可能性はあります。日本の基準値とAQIの対応は目安であり、厳密な等価ではありません。山火事そのものの状況は、この記事の対象外です。2026年8月15日時点でネバダ州内の活火災はいずれもラスベガスから離れた場所にあり、この記事は「煙やダストが来た日の手順」として書いています。


※この記事は一般的な情報提供です。 個別の医療・法律・税務・移民・保険・金融に関する助言ではありません。制度・料金・要件は変わることがあり、実際の手続きや判断の前に、医師・弁護士・CPA(会計士)・各公式窓口など専門家にご確認ください。
出典クリックで開く
EPA/AirNow「AQI Basics」および「Final Updates to the Air Quality Index (AQI) for Particulate Matter」ファクトシート(2024年2月・PM2.5のブレークポイント改定)/EPA「Frequent Questions About Wildland Fire Smoke for Individuals」/EPA「Wildfire Smoke: A Guide for Public Health Officials」2026年6月版/CDC「Safety Guidelines: Wildfires and Wildfire Smoke」およびCDC/NIOSH「Community Respirators and Masks」/クラーク郡 Department of Environment and Sustainability(大気質局)の予報・注意報ページおよびニュースリリース/CCSD理事会ポリシー P-6114/環境省「微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報」。すべて2026年8月15日に編集部が各公式ページを直接開いて確認。AQIの区分は Good / Moderate / Unhealthy for Sensitive Groups / Unhealthy / Very Unhealthy / Hazardous の6段階。本文の表に載せた行動は、AQI技術文書 Table 4 のPM2.5専用の行から取っている。PM2.5の対象者は "People with heart or lung disease, older adults, children, and people of lower socioeconomic status" で、心疾患と社会経済的な条件を含む点がオゾンの文言と異なる。なお "near busy roads"(交通量の多い道路の近く)を含む文言は二酸化窒素と二酸化硫黄の注意文にのみ現れ、PM2.5の行には無いため、この記事の表には入れていない。Hazardous では敏感な人に "should remain indoors and keep activity levels low" と屋内待機を求めており、ここだけ制限が運動から外出に変わる。PM2.5の濃度換算は2024年2月の改定後の値(Good 0.0-9.0、Moderate 9.1-35.4、Unhealthy for Sensitive Groups 35.5-55.4、Unhealthy 55.5-125.4、Very Unhealthy 125.5-225.4、Hazardous 225.5以上、いずれも24時間平均のマイクログラム毎立方メートル)。郡の注意報の発令基準は同郡予報ページの記載で、一酸化炭素・粒子状物質・オゾンのいずれかが12〜24時間以内に AQI 101 以上に達すると予測される場合。マスクについてはEPAのFAQが "Paint masks, dust masks, or surgical masks do not reduce smoke inhalation." とする一方、EPAの2026年6月版ガイドは "If respirators are unavailable, one-strap masks or surgical masks may provide some smoke protection." としており評価が食い違うため、本文では両者に共通する範囲(布マスクは不可・N95が第一選択)にとどめている。屋内対策の原文は "use a high-efficiency filter (e.g., one rated MERV 13 or as high as your system can accommodate)" と "operating those with a fresh air intake on recirculate"。CCSD P-6114 には大気質の数値基準の記載がなく、実施は "Superintendent, or designee" に委任されている。日本側は環境省の同ページに「1年平均値 15μg/m3以下 かつ 1日平均値 35μg/m3以下」(平成21年9月設定)と「環境省暫定指針:日平均値70μg/m3以上」が明記されている。AQIは24時間平均のブレークポイントに基づく指数であり、日本の基準値との対応は目安であって厳密な等価ではない。現在のAQI値は日々変わるため本文に数値を書いていない

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