生活実用Practical living
帰るのも、来たとき並みに手続きがある——本帰国の段取りLeaving takes as much paperwork as arriving — a checklist for moving back to Japan for good
最終更新: 2026年7月6日 | 最終確認: 2026年7月28日 | YO-MIDOKORO編集部 | 約9分

いつか日本へ戻る日のために。解約や送金といった生活の店じまいから、グリーンカードや税の重い手続きまで。帰国が決まってから慌てないよう、出口の段取りを順に並べました。
渡米のときは、あれだけ調べて準備した。ところが帰るときの手続きは、意外と誰も教えてくれません。実は、本帰国は来たとき並みに段取りが要る。しかも一部は帰国の数か月前から動かないと間に合わない。ここでは出口の作業を、軽いものと重いものの二層に分けて整理します。軽い方は誰でも、重い方は特にグリーンカード保持者が要注意です。
第一層——生活の「店じまい」
まずは生活インフラの解約と移動。日本の引っ越しと似ていますが、国をまたぐぶん順番が大事です。
- 公共料金・ネット・携帯・保険の解約:電気(NV Energy)・水道・ゴミ・ネットは停止日を退去日に合わせて連絡。携帯は番号を残すか完全解約か決める(日本で使う予定なら eSIM やナンバー保管サービスも)
- 車の売却・名義変更:出国前に。ローンが残っていれば完済手続きも
- 銀行口座の扱い:すぐ閉じず、最後のカード請求や税還付の着金まで1つ残すのが安全。ただし海外住所を登録した口座の維持を認めるかは金融機関ごとに方針が違うので、事前に窓口かオンラインで確認を。日本から使えるようオンライン設定も併せて確認
- お金の移動:まとまった資金は送金の回で扱っています。実行時に各社の「受取額」を比べて決めてください。為替のタイミングも見て
- 郵便の転送:USPSにも米国住所から国外住所への転居届はありますが、オンラインでは出せず、出国前に郵便局の窓口で紙のPS Form 3575を提出する形。しかもすべての郵便物が国際転送されるわけではないので、重要な郵便は信頼できる人の住所か、国際転送サービスへ回すのが安全
- 子どもの転学:現地校に在学証明・成績・予防接種記録(英文)を発行してもらう。日本の学校・補習校の受け入れに必要。学年の区切りが日米で違う点も早めに相談
- 在留届の変更:領事館に届けている在留届は、帰国や第三国への転居のときに「帰国・転出届」を出します。オンライン(ORRネット)で在留届を出した人はORRネット上から、書面で出した人は提出先の大使館・総領事館に相談する形。帰国後でも提出できます。日本では市区町村へ転入届、年金・保険の再加入も
ここまでは、退去日から逆算して1〜2か月前を目安に動き始めます。ただし車の売却、学校書類の発行、保険の解約、郵便の転送は、それぞれ窓口ごとに所要期間が違います。該当するものの所要期間を先に問い合わせて、逆算し直してください。問題は次の層です。
第二層——資格と税の「清算」
ここが重く、そして見落とされやすい。特にグリーンカード(永住権)保持者は、ただ日本に帰るだけでは終わりません。
グリーンカードの放棄は、自動では起きません。自分の意思で手放す標準の手続きがForm I-407です。提出先は3通りありますが、原則は郵送一択。
- 原則:ミズーリ州リーズサミットのUSCIS宛に郵送(USPS・FedEx・UPS・DHLとも同じ住所)
- 入国港:出国・入国の際にCBPの職員に手渡すことも認められています
- 例外:USCISの国際事務所や、国際事務所のない米国大使館・領事館での対面提出。ただしUSCISは "in very rare circumstances" と書いていて、放棄したことの即時の証明が要る場合(典型はA・Gビザの申請)に限られます
Form I-407は、永住権放棄の法的な記録です。 署名し提出すると、自分の意思でLPR資格を放棄したことがUSCISの記録に残ります。フォーム自体に、放棄の有無を移民裁判官の審理にかける権利を「知った上で、自発的に、積極的に放棄する(knowingly, willingly, and affirmatively waive)」という一文があり、署名はこの権利放棄も意味します。再入国の予定、家族の状況、米国税務上の扱いへの影響を確認し、必要に応じて移民弁護士と税務専門家に相談してから署名してください(USCIS - I-407)。
署名のないものは却下されます。ここだけは絶対に忘れないでください。
一方で、長期間アメリカの外に住んだからといって、日数の経過だけで永住権が自動的に消えるわけではありません。USCISは「一時的な渡航は通常、永住権に影響しない」としつつ、「米国を永住の地とする意思がなかったと判断されれば、資格を放棄したとみなされる。目安は1年を超える不在」と説明しています(USCIS - International Travel as a Permanent Resident)。つまり引き金になるのは、再入国時の審査官の判断や、移民裁判官による審理であって、経過日数そのものではありません。税務上も同様で、IRSは長期居住者(LTR)の資格が終わるのは「取り消された場合」または「行政上・司法上、放棄したと判断された場合」、あるいは「租税条約上その相手国の居住者として扱われ、条約特典を放棄しなかった場合」としています(IRS - Expatriation tax)。出さずに長く日本に住むと、こうした判断の対象になって、資格の宙ぶらりんや税務上の面倒が残ることがあります。
そして税。長期居住者(LTR)——永住権が終わる年までの直近15課税年のうち、少なくとも8課税年でグリーンカードを持っていた人は、離脱時にForm 8854をIRSに提出し、過去5年の納税を満たしていると証明する必要があります。ここは「8年間まるまる」ではなく「8つの課税年」で数えるのがポイントで、年の途中で取得・放棄した年も1課税年として数え得ます。逆に、その年に租税条約上の外国居住者として扱われ、条約特典を放棄しなかった年は8年のカウントから外します(IRS - Instructions for Form 8854)。I-407(移民局向け)と8854(IRS向け)は別物で、両方が必要になり得ます。
さらに一部の人には出国税(exit tax)がかかります。対象は「covered expatriate」と呼ばれる人で、次のいずれかに該当する場合です。判定は申告する年ではなく、離脱した日(expatriation date)が属する年の基準で行います。
| 出国税の判定(いずれか1つでも該当すれば) | 基準 |
|---|---|
| 純資産(離脱日時点) | $2,000,000以上 |
| 直近5課税年の平均年間所得税額 | 2026年に離脱=$211,000超/2025年に離脱=$206,000超 |
| 5年分の納税証明 | Form 8854で証明できない場合 |
金額はインフレ調整で毎年動きます(純資産の$2,000,000は固定額)。この表の額は2026年7月時点でIRSの資料から拾ったものなので、自分の離脱年の数字をIRSで確かめてください。
多くの人はこの基準に届かず出国税そのものはかかりませんが、基準未満でも長期GC保持者は8854の提出と納税証明が必要です。「自分は関係ない」と省略すると、後で問題になり得ます。
401kやIRAも論点。放置・引き出し・ロールオーバーで税の扱いが変わります。59歳半前の引き出しには、総所得に算入される部分に通常の所得税がかかり、例外に当たらなければそこに10%の追加税が乗ります(分配額の全部にかかるわけではありません)。例外は複数あって、障害、末期疾患、一定の医療費、実質的に均等な定期支払(SEPP)など。55歳以降に勤務先を離れた場合の例外は勤務先プラン向けで、IRAには適用されません(IRS - Topic no. 558 / Topic no. 557)。日本の居住者になった後の受け取りは日米双方の課税を考える必要があり、ここは特に専門家の領域です。
なお、アメリカ市民やグリーンカード保持者は、米国の税務上の居住者である間は、日本に住んでからも全世界所得の申告義務が続きます(海外勤労所得の除外=FEIEの上限額は課税年ごとに変わります。2026課税年度$132,900・2025課税年度$130,000という額が案内されていますが、自分の課税年の額をIRSで確認してください。FEIEは自動ではなく、tax homeが国外にあることやbona fide residence/physical presenceの要件を満たしてForm 2555で選択する必要があります)。税務上の居住者でなくなるのがいつかは、移民上の手続きの日付とは別に判断されます。自分の場合にいつ切り替わるのかは、必ず専門家に確認してください。いずれにせよ「帰ったら申告終わり」ではない点に注意を。
まず動く順番
- 数か月前:GC保持者はI-407・8854・出国税の要否を専門家に相談(一番時間がかかる)
- 1〜2か月前を目安に:解約日を退去日に設定(電気・水道・ネット・携帯・保険)、車の売却、子の書類発行。それぞれの所要期間を先に問い合わせる
- 直前:お金の移動、口座は1つ残す、郵便転送
- 帰国後:帰国・転出届・転入届・年金保険の再加入
帰国は、渡米と同じで「段取りを知っているか」で消耗が変わります。特に税と資格の清算は取り返しがつきにくいので、移住の入り口を手伝ってくれた人と同じくらい、出口も専門家と進めるのが安全です。この記事は制度の骨格で、個別の判断はCPAや移民弁護士に自分の状況を見せて確認してください。
生活実用シリーズは、渡米の入り口から日々の暮らし、そして帰国の出口まで一通り並びました。ここから先は、季節の話題や、読者から寄せられた「これ知りたい」を拾って続けていきます。投稿フォームで、あなたが困ったことも教えてください。次の一本の種になります。
※この記事は一般的な情報提供です。 個別の医療・法律・税務・移民・保険・金融に関する助言ではありません。制度・料金・要件は変わることがあり、実際の手続きや判断の前に、医師・弁護士・CPA(会計士)・各公式窓口など専門家にご確認ください。